座談会開催

投稿日:2020-11-16

小林:今日は集まってくださって、ありがとうございます。私は作品としてのアートだけでなく、アーティストの方がなぜそれを制作したのかという思想の部分ももっと注目されるべきだと考えています。皆さんが根底にどういうものを持って生きていかれようとしているのか、そんなことも今日は聞かせていただければと思います。

まず、皆さんのやってみたいことや、抱えている問題点などについて、ざっくばらんにお話しいただけませんか?

渡辺:問題点といえば、まず製作に必要なお金がありません。アルバイトしながらの制作って、どちらも時間が取られて難しいから。もっと集中して制作できる環境があればいいなと思っています。

久保田:作品を販売できる作家はまだいいんですけど、インスタレーションだったりパフォーマンスをやっている人は作品が形になって残らないので、お金をよそから引っ張ってこないといけない。スポンサーを付けるとか、資金調達をするにあたって、何かマッチングサイトのようなものがあれば助かるなと思っています。コミッションワークとか、レストランでの作品展示といった機会のマッチングがもっと広くできるようになるといいですね。ギャラリーとの繋がりを持たないアーティストも大勢いるので。

小林:アーティストの方たちは、ご自身の探求するべきところに集中されて、おっしゃるとおり、ギャラリーとの関係性を構築するツテも時間もないのかもしれませんね。これから、エブリチャンスがそういう役割を担っていければと思います。

坂下:さっきの話と繋がるんですが、僕もやっぱりお金がない。展示する場所を得るためには資金が必要だったりします。卵が先か鶏が先かという話もありますが、僕らはまず展示する場所を確保しないといけない。そうすると、作品に費やす時間がなくなるというパターン、悪循環に陥ってしまうというのがあったりします。

古谷:発表の機会を自分たちでどうやって作ろうか、いつも考えています。僕はインスタレーションを手がけていますが、そもそも発表の場と機会がないと作品を作ることもできない。コロナがあって、11月の展示も延期になって、企画もなくなってしまうと、制作のサイクルが乱れてくる。こんな状況下でも、ヴァーチャルも含めてもっと展示の機会があるといい。

若月:私は工芸なんですけど、陶芸をやっている子もいて。残る作品を作ると保存場所が必要になります。アトリエの費用もかかるし。売れるというサイクルがあればいいけど、売れる場所がないと費用がかさむだけ。作りたいから作るというのは、実際は難しいんです。

久保田:例えばレンタルスペースみたいなところで、作品を格安で預かってもらえるなら助かります。そこから飾りたい人に向けてレンタルのサービスもあればいいなと思ったりする。やっぱり人に見てもらうというのが、倉庫に眠っているより健全かなと。

小林:他にもオフィスや学校とか、工夫していくと広がるかもしれませんね。

久保田:卒業制作って大きいものを作るから、もらってくれる人を探している人もいる。最悪、廃棄するにもお金がかかりますし。

小林:選択肢があると面白いですよね。倉庫事業をやっている企業は、実際に保管だけでなくそれを展示する保管美術館にしていたりするところもあるようですね。

何れにしても、アーティスト個人の力だけだと、現状打開は難しいですよね。でも、時代は変わってきています。自己実現の世の中に近づいてきています。アートなどの重要性、必要性が高まってきていると感じています。もっとアートやアイデアを必要する世の中に移行してきている。皆さんにはご自身の価値を知っていって欲しい。こんなことをしたら、もっと面白くなるのではというアイデアはないでしょうか。

岩田:ここ10年くらいでコレクターという方が増えて、市場ができて、オークションというシステムが浸透してきました。ギャラリーの必要性が変わってきています。マネタイズできる人は、売れる作品の人が多い。それ以外の、インスタレーションなどの分野をどうするかという問題があります。

倉敷:アート界で難しいのは、売れるということが所持することに直結していること。でも売れない形のものに優秀な作品はないかというと、決してそうではない。世の中には売れるものではない、形に残らないアートもあるんです。でもそれを手掛けるアーティストが生き残る形が、日本にはない。ブランディングが強すぎるというか。売れているものだから買いたいというのが多すぎるんです。反面、いいものを作っているのに売れていない人がいる。アートって分野がすごく広いので、お金を出してくれる企業との関わりをどういうバランスでやっていくかという難しさがあると思います。

小林:例えば、スイスの時計ブランドが日本の漆塗りの文字盤の時計を発表したことがありましたね。ブランド品だから売れるという話もありますが、漆塗りが面白いといって話題になるきっかけにもなりました。

いいものが埋もれていく中で、どうチャンスを見出していくのか。マスに向けて発信することも大事ですが、売れなくても注目すべきものとして出していくにはどうしたらいいでしょうか。

倉敷:ブランド力を作るには、才能に加えて、当然コネクションも必要だと思います。でも狭い人間関係の中で、作家同士の知り合いしかいない人もいて、そういう人が埋もれていくのが本当にもったいないと思っています。コネクションがなくても見つけてもらえる形、発見してもらえる仕組みがあればいいですね。

小林:確かに。そうした意味で、SNSで手応えを感じているという方はいますか?

渡辺:多少でしたら……。

小林:意識して表に出している方は?

久保田:最低限必要なものとしてやっています。インスタはそういう使い方です。ツイッターはネガティブな部分もあるから、あえて控えている人もいます。

倉敷:セルフプロモーションをしていないからダメというのではなくて、マーケット系じゃない人が置いていかれたりしている現状から脱却して、自分で自分が輝ける場所が見つけられればいい。アートって、すごく狭くて閉鎖的な世界だから。

久保田:最近YouTubeとかで、オラファー・エリアソンとかを目にする機会が増えてきている気がします。YouTubeであれば、もっと見てくれる人がいるんじゃないでしょうか。

小林:これからの世の中では、もっと広いビジネスの分野で美意識の部分がより重要性を持つようになるのではないでしょうか。その審美眼も含めて、これまでとは違うエリート像が求められてくるのでは。

渡辺:でも結局、ビジネスの文脈の中では価値づけされているものの方が選ばれやすい気がします。絵画や工芸品はリスクを追わなくても発信できるけど、困っているのはそうじゃない人たちですよね。

小林:いい作品は作っていても、メッセージを発信できていない人たち、ですね?

渡辺:いいと言っても、その価値って未来から与えられるものじゃないですか。決めていく人がいないと未来に繋がらない。リスクがつきものだと思うんです。湖畔で裸の絵を描いた人も、その当時は批判を浴びたけど、今日では価値がついている。アートの面白さってそこにもあるはずです。ビジネスの見地から考えると、どうしたらいいのか分かりませんが。

久保田:そもそもどんなアーティストがどういう活動をしているか、探すのが難しいのでは。一箇所に情報が集約されているキュレーションサイトがあるといい。趣味趣向の重なる人たちと関われる可能性があると思います。そんな出会いをプロデュースできれば、作家としてやっていける可能性が増えると思います。

小林:確かに、コミッションワーク始まりで飛躍できる可能性もありますよね。

古谷:マッチング的な場所があれば、企業側にも「そこで探して」とスムーズな流れになるのでは。チャンスがあるというだけで、気が楽になるという人も多いと思う。

若月:現状は、枠組みに合わせてできる人しか参加できていないというのがあります。でも、考え方からその人の面白さが分かるというのもあるので、作品だけでなく、アーティスト自身が紹介されているような情報源があると、もっと繋がりやすくなると思います。もっといろんな種類の作家を参加させられるプラットホームが欲しいですね。

古谷:僕がベトナムに行った時のことですが、クラウドファンディングで資金調達して、若い作家5人で行って、ベトナム人の作家5人と一緒にリサーチして作品を作るということをしたんです。お互いに刺激しながら、発表会までしてきました。そこにコレクターが来てくださって、話をしました。お金を持っている人たちって、まだ自分が経験したことのないことにお金を出すよという話を聞けたのが興味深かったですね。僕にとっては、自分以外のアーティストとの関わりが楽しいです。同じ場所にいるのに、僕には見えてないものが見れるというのがすごく意義がある。同じアーティスト同士と過ごす時間や経験も、貴重な体験になるのではと思いました。

小林:作品だけでない、アーティスト同士の交流の場、ですね。

古谷:アーティストたちが、例えば廃校になった小学校とかに滞在しながら、他の作家と寝食をともにしなが過ごして、リサーチしたその街を案内するというようなこともできるかも。現地調達をして、最終的にないものは借りてくると。最近よく、左官屋さんなどとチームを組んで共同作品を作ったりしています。アートの楽市楽座が出来上がるといいですね。

坂下:もっと気軽に、ライトに始められるものがあったらいいかもしれないですね。

久保田:作家をお気に入り登録できたりとか、ユーザー数がどのくらいいるかとか、コメントをもらえたりとか、形にならないものでも支援してもらえるのはいいことだと思います。そうして分母が少しでも増えていけば、世の中変わっていくかなと。

小林:アーティストが増えると視聴率も増えるという好循環になるでしょう。

久保田:インスタレーションの作家も流通してたりはしますが、ランドワークなら写真になったりとか、アーカイブをポスターにするとか、冊子にするとか。その場でしか体験出来ないものもあります。日本では中堅と呼ばれるくらいまでに成長するためのキャリア作りが難しい。

倉敷:そうですね、とにかく生きながらアーティストを続けることが難しい。

久保田:いまもコロナで展示がなくなってしまったりとか。藝大では作品の内容は学べますが、マーケットとの取り組み方のレクチャーみたいなものがない。卒業した後は、いいものを作れば仕事は降って湧いてくるという盲信みたいなものがあって、卒業してみるとそこが上手くできる人とできない人の差が出てきます。アーティスト同士で、現状がどうなっていて、どうしていこうと考えているかをディスカッションする場があってもいい。

倉敷:確かに、自分が知らないと、身近なところでは先輩に聞くしかないですね。

久保田:幾つかのスタンダードを知っておきたいですね。藝大って、他の大学の人と交わる機会がないし。

小林:今回の取り組みの中に、何か教育的な側面を入れておいてもいいのかも。ビジネス界から提案できることがあってもいいのかもしれません。

倉敷:デザイナーでも、まず会社で働いてマーケットの仕組みとかを勉強してから独立するというのもありますが、アーティストはそういうのがなくて、卒業したらいきなり自営業として放り出されます。アーティストとしての回し方というか生き方を身につけてないまま放り出されるんです。生きながらだから、手探りがすごく難しい。

小林:手探りで生き抜く。とてもシビアですね。いまの時代だからこその、皆さんの生き方も知りたいと思います。

久保田:去年の春に卒業して、特殊塗装をしながらやっているんですけど、どう稼ぐかは人によってかなり差があります。普通の人が卒業したら就職になるけど、それ以外のやり方というのを持っている人がいたら、どうできるのかを学びたいです。

小林:ここにきたら学べる機会があるとか、ビジネスパートナーになってもらえる機会があるとしたらいいですよね。

久保田:自分はやっぱり作品を作るくらいしか出来なくて。岩田くんと展覧会をやったんですけど、チームがあるだけでやりやすい。キュレーターは作品を作れない代わりに場所を斡旋したり、チームでやれることが多いから、他分野とつながる機会が欲しい。活躍している人は、チームになってデカいことをしている人が多い。いわゆる天才みたいな人が意外といなくて、アーティストと言っても普通の人が多いので。練習して身についた技術はあるけど、人間としては普通という人。特別扱いしないで欲しいというのはあります。去勢を張って目立っている人はいるけど、自分は世捨て人にはなりたくない。社会の一員として作品を作っているのを分かって欲しいと思います。

倉敷:アーティストって、やっぱり変わった人というイメージで見られます。

小林:皆さん、どういう思いからアートの分野に飛び込んだのでしょうか?

久保田:アーティストになるつもりはなかったです。絵が描きたかっただけ。マネジメントとかをしたいと思ったけど、そういうコースがなかったから、自分が作る側に回ってしまいました。

渡辺:思いついたというか、降りてきてしまった。中央大学にいて、大学出たら一丁前じゃない、どうしようとなった時に、じゃあ自分は彫刻をやろうと。

若月:好きなことだし、それを極められたらいいなという理由で選びました。大学に入ったらそうじゃないと気が付いたところもありましたけど、社会に対して何のために続けるのかを考えています。いまの自分には技術しかないから、それを突き詰めたいと思っています。他の勉強はしてこなかったし。いま何ができるかを考えて生きるしかない。自分ができる精一杯で生きていこうと、それしかないです。

来年から教室をやろうとしているんです。カルチャーセンターで教えたり、美術予備校で受験対策を教えたりとか。単純に描きたいというところから入って、答えのない良さを良さとして捉えています。答えのない良さ、そこを教えられる教室をやりたいです。ラフに簡単に技術に触れて、その中で絵が上手ければいいじゃないと。考え方、ビジネスの話が出ましたが、アートは小さい頃から触れていたら生き方も変わるものです。自分ができることで生きていこうと思っています。

倉敷:私も小さい頃の夢が、画家か料理家になりたいというものでした。ずっとやってきたことを今もやっています。

小林:関わった人の価値を広げていきたいですね。夢を実現できたということを具現化できたら素晴らしいと思います。

古谷:ワークショップのできる場所を、若月さんと一緒に千葉の松戸市に作っています。

若月:自宅兼アトリエで、安く上げるために自分たちで改装して巣作りをしています。

インスタとかはやってますけど、私はプレゼンが得意ではなくて。とりあえず必要な情報は載せるんですけど。情報が溢れているので、見てもらえるレベルで作れているかというと分からないので、誰かからアドバイスを受けられたら嬉しいです。

小林:エブリチャンスに、そういう相談窓口があったらいいですね。例えばこのマスクは和紙製なんです。和紙のアパレルというものがありましたけど、ここまでの繊細なものはなかなか作れる人が少ない。アートも発想を変えるとプロダクトになるんですね。少しでも暮らしを快適に過ごせるものを、アーティストも作れるようになると素敵ですね。

倉敷:サステナブルというところに関心が高まってきていますね。ビーガンを作ってみたりとか。

小林:もっとこだわって行けたらいいですね。何かお互いに聞きたいことはありませんか?

久保田:アートに関わりがなかったのに、これから関わろうというビジネスパーソンに会う機会が多い気がします。需要が高まっているのでしょうか?

小林:答えのない世界に突入してきているからでしょうか。直感的にこれが正しいんじゃないかというものを探す人が増えてきている気がしますね。

久保田:採算が取れるとか取れないとかは別次元の話でしょうか?

小林:採算を取らないといけないけれど、何をもって採算が取れるとするのかが変わってきているのでしょう。何を軸に判断して行くのか、これまでとまったく異なるメジャーが用いられるようになってきました。

川添:私はこれまでアートとまったく関係のない金融の世界に生きてきましたが、ある感じることがあって2019年にきっぱり辞め、2020年にエブリチャンスという会社を立ち上げたところです。人の生き方や地球上の動きそのものという観点で物事を考えた時に、感性を重視した生き方を忘れてきている自分がいて、直感的に方向転換をしたくなったという感じです。そうした時に、ミュージシャンとか障害者の方のために何かできる事業を始めようとも考えたのですが、美術の分野において、スポーツ、囲碁、歌舞伎の分野と違って、10代始め若手の逸材スターが注目されることが何故ないんだろうという素朴な疑問が沸いて、これだ!と思い、美術を支援する仕事にトライしようと考えたんです。これからの時代、自分を見つめ直したら誰しも思考回路がもっと人間らしく戻って行くんだろうと確信しています。コロナの影響だけでなく、趨勢として最近、そういう動きをする人が増えているような気はします。時代が変わってきていると肌で感じます。そして、美術系のアーティストの方々の活躍する場が、どんどん増えてくると思っています。

小林:生きる力でいうと、これからの世の中、どう生き抜いていくかを真剣に考えていかなければなりませんね。人間って、やりたいことであればなんとかするだろうと思うんです。人との出会い方は大事です。どういうタイミングでどう言葉を交わすかに僕はこだわります。

皆さんの考えるクリエイターとアーティストって、どう違うものなのでしょうか?

渡辺:クリエイターって、依頼主とか相手がいる場合が多いのでは。

久保田:アーティストの定義も、人によって違いますよね。

倉敷:アートは、ものとか形式でなく思想。だから範囲が広くなるんだと思います。

久保田:アートは軽量化できないもの。言葉にできない、はみ出ているもの。アウトプットしようとしている人は、フォーマットが与えられすぎている時点でアートじゃないと思う。捉えられないものがキープされ続けられているもの。アートのなんたるかは、僕にはまだ分からないですけど。

岩田:色々な思いがあって作り出したもの。見る人が引き出していくことで生まれたり、理屈を超えて心が生まれるもの。そこにあるもの。働きかけなのではないでしょうか。

坂下:それぞれの視点を形にする方法が違うだけかと。分からなくてもいいのかな。分からないけど、面白いじゃんと思ってアートをやっています。なんか分からないけど惹かれるねと。空気感に圧倒される空間、ものとか空気を出していればアートになり得るのではないかと思います。

若月:漆になった時点でアートではなくなって、クラフトになるような。自分はそんなことじゃなくて、もっと思想を大事にして作りたいです。自分が漆芸作家というカテゴリーになったりすることにも違和感を抱いています。アートの概念をどう捉えたらいいか分からない中でやっています。

渡辺:みんなアーティストでいいのかなと思います。優れたアーティストは存在すると思う。切実さ、時代に対してとか、そのためのどうするかという労力とか、そんなところが違う人がいると思う。

若月:カテゴリーの話ですが、現代アートの括りを何と考えたらいいのかと。括りとしては現代アートだけど、そこに何がハマるのでしょうか。立体的なものの見せ方を悩んでいる。見る角度を変える作品をどうするか、手探りな部分が大きいと思います。新しい知識をもらいながら形にしていきたいなと。漆で作った作品は何になるのかなと。やっぱり、カテゴライズできないものが現代アートなのでしょうか。

久保田:現代アート自体が更新され続けていますよね。自分たちでやりながら勉強していることが多いと思います。

渡辺:大学の先生に、現代アートを扱っている方が少ないと感じています。

久保田:カテゴライズしないと認識されないというのはあると思う。誰かに紹介する時には、仮でも必要になるかなと。タグという方がしっくりくるかも。でも、これだというひとつしか選べないことが、むず痒いです。

坂下:僕ら的には、そういう目線で見てますというようなタグですね。

久保田:作家と齟齬が出やすいところですよね。作品を一から作るのではなくて、もともとあるものから作っても、一から作ったと誤解されてしまう部分がある。カテゴライズできるとは思うんですけど。レディメイドというタグを作れば済む話かもしれない。

小林:何をもってタグを作るのか、ですね。

川添:選択肢にない気づきを入れるというのもあるかもしれないですね。

岩田:出てきた作品への支援かもしれないけど、根底にはプロセス自体を支持されていたりするのかもしれない。どこを支援するかによってカテゴリーも違ってくると思います。支援によってカテゴライズを考えていってもいいのではないでしょうか。

川添:制作過程を見るのはいつでも楽しいことですね。プロセスの方が売る方には興味があったりします。

岩田:ドキュメンテーションとして作品にしている人もいるかもしれないし、人によるところではありますね。

川添:まずは場を提供して見てもらう。見てもらい方のひとつとしてYouTubeにプロセスが載っていても楽しいかもしれません。作品として掲載していたら価値があるという捉え方もあるでしょう。

久保田:中堅以上の作家もそこにいるのか、どういう人たちがそこにアクセスできるのかが気になります。誰でも参加できるというよりは、個展をやっていないと登録できなかったりするとか? 学生じゃない括りでやっている人にとっては、学生というのが足枷になるかも。必ずしも美大に行ってなくてもいいのでは。そもそも美大は行ける人が少ないですし。そういう人たちが入っていける場所が少ないという問題があります。実際にはいま活躍している人にも、美大出身じゃない人もいます。僕自身、まだ学生なんだねと言われることが多いです。でも、学生って言われることに対して違和感を感じることが多い。

坂下:続けて行くことの難しさが、学生と卒業後では違います。特に卒業して5年くらいまでの人たちに支援があると、多くのアーティストが助かると思います。

倉敷:卒業後は奨学金ももらえなくなるし。

坂下:卒業すると、作品を応募するのも難しい。年齢にも当てはまらなかったりすることがあります。若手支援の対象が25歳までとかいうのもあるので。自分の場合、規定から外れていることも多くて、チャレンジできないということもありました。

久保田:卒業したてが一番苦しいですね。学生支援が打ち切られるから。それから35歳くらいまででしょうか。30歳くらいで外に出始める方が多い。業界としてそういう雰囲気があるんだと思います。40幾つで若手特集に組み込まれている場合も多いです。

坂下:デビューしていても、業界的に認識されているかにもよります。有名なギャラリーでデビューしたかという見方もある。やればいいというのもある。

久保田:どこでやるのかも重要です。お金さえあればデビューできるとも言えるし、作品が評価されないとできない場所もある。青山のスパイラルとか、原宿のジャイルとかもいいですね。あとは銀座シックスとか。不特定多数が来るところがありがたいです。カフェレストランだと、アートと言ってもインテリアになりがちです。展示用のスペースの方が面白いものができるというのはあります。

倉敷:光の当たり方も大事。ギャラリーが理想的ですよね。

小林:学生の間は守られていたものが、社会に出ると厳しくなるという現実があるんですね。例えばコラボレーションしたいブランドといったものはありますか?

久保田:三宅一生とかヨウジヤマモトとか。ファッションとか別のところからのファンが繋がっていくというのがあると思いますね。

坂下:僕が以前アシスタントとして務めていた彫刻家の大森暁生さんは、企業やアパレルさんとコラボをしていたことがあります。それをベースにネックレスにしたりとか。お店で飾ってもらったりしつつ、立体の作品をTシャツにしたことがあります。

久保田:有名無名にかかわらず、コラボに取り組む方が多い。作品がブランドの世界観と合えばあり得るのかなと。

小林:色がつきすぎている人よりも、感性がある方とやりたいというブランドも多いのではないでしょうか。無名のアーティストを自分で見つけたという方も多いと聞いています。

久保田:シグネチャーがある方がやりやすい。こういう作品が出てくるだろうと想像できないと、コラボレーションしにくいと思います。

坂下:フリークスストアとかの雰囲気も好き。何か一緒にやれたらいいですね。

久保田:素材提供してもらえるだけでも助かります。そんなきっかけを作っていただけたら、すごく嬉しいですね。

小林:今日は貴重なご意見を聞かせてくれて、ありがとうございました。それを生かせるように進化させていきますので、これからもよろしくお願いいたします。