坂下マイルス彰 Miles Akira Sakashita

自分の痕跡を残すための手段として

――どのような作品を手掛けられているのか、教えていただけますか?

坂下:学生時代から作り続けているのは、粘土で原型を作った焼き物です。模様にこだわっていて、僕が町を歩いている時に拾ったものなどで模様を付けています。焼き物は古くからあるもので、縄文土器も当時身近にあるものを使って模様が施されています。それが現代ならどのようなものになるのかと考え、自分で拾ったプラスチック片や缶のプルタブ、石、枝などで装飾した焼き物を作っています。

――作品には、坂下さんのどのような想いが込められているのでしょうか?

坂下:僕にとっては、自分の痕跡を残すための手段が作品作りなのだと思います。僕が考えたり、人と関わったり、作品を作ったりというのは、痕跡を残す過程なのかもしれません。

今は分かりやすいビジュアルやリアルなものが求められる時代で、目に入ってから理解するまでのスピードがすごく早いものが多いですよね。逆に僕は、じわじわと湧き上がるような、理解するまでのスパンが長い作品を作りたいし、見る人にもそういう考え方や感じ方をしてほしいという想いがあります。

あえて分からないものを作っていますので、「これは何?」と質問されたら僕自身にも分かりません。答えを急ぎすぎたくないのです。それを良しとした作品としています。

――すごくユニークなアイデアですね。どのような考えから作品作りをスタートしたのでしょうか?

坂下:人間の根源となっている古代にやっていたであろうやり方を、僕が現代にあるものでやることに意味があると思っています。それによって新しい何かが生まれるんじゃないかと思いました。

彼らを主役にした作品はいくつか作っているのですが、僕自身が作りつつも彼らを別の存在とするために、僕自身も直接触れないようにしています。材料はもともとやわらかい水粘土で、直接触れると指紋が付くし、マットな質感になってしまうため、軍手をして、その編み模様も生かしながら原型を形作っています。拾ったもの次第でパターンも無限大です。

――これからどんな作品を作りたいですか?

痕跡を残すということをテーマにしたこのシリーズは、今後も増やしていきたいですし、僕自身の手跡を残していくような、別の手法を使った作品作りもしていきたいなと思っています。日本だけでなく海外で拾ったもので作品を作っても面白いですよね。世界各地で同じことをしたら、その土地ならではの不思議な物が見つかるかもしれないですし、場所固有の作品ができるはずです。



将来的には世界に行けたらと思っています。また最近は彫刻作品ではよく習作として作られている首像をイメージして、表面に漆を塗った(素焼きに漆を塗る手法は縄文時代の作品などにみられ、それに倣って作品の仕上げに応用してみています。)頭部の作品も手掛けています。それももっと増やしていきたいですね。

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