岩田 智哉 Tomoya IWATA

キュレーターとしての思い

――岩田さんは、学生にしてすでにキュレーターとして活躍されていますね?

岩田:僕は現在、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科に在籍しているのですが、所属する研究室では研究に加えて実践的な学びも重視しています。そのため実際に自らキュレーションを行ったり、キュレーターでもある教授のプロジェクトにアシスタントとして参加させてもらうなど、自身の研究に加え実践的に学んでいます。

――分野的には、どの辺りに興味があるのでしょうか?

岩田:アート全般、幅広くなのですが、キュレーターの仕事は「ジャンクション・メイキング」といわれることもあるように、何かと何かを繋げ新しい価値を生み出すことにあると考えています。そのため既存の枠組みに捉われないように常に心がけています。例えば、これは現代アートじゃないからと単純に切り捨ててしまうのではなく、ひょっとしたらこれも何か、新しくて面白いものに繋がるかもしれないという気持ちで、今はいろいろなものを吸収しています。

――岩田さんの記憶に残るキュレーション事例を教えていただけますか?

岩田:この前自らキュレーションを行なった展覧会は記憶に残っています。その展覧会は、いかにして他者を理解できるか/できないかということをテーマにしたものだったのですが、西洋では「理解する」という言葉の語源に「掴む」という意味合いがあり、他者を一方的に掴むというニュアンスがあります。これは本当に相手のことを理解しているのでなく、相手のことをこうだろうという、自らが持つ相手の像に押し込むことを「理解する」という言葉で表しているのですが、そのような他者理解のあり方に疑問を感じました。そこで新型コロナの影響下で他者との距離感が変化している昨今において、他者理解のあり方というものを改めて考え直す必要性を感じ、自らを他者に重ね合わせていくような形の理解のモデルについて考察する展示を行いました。

――岩田さんがキュレーターになりたいと思ったきっかけは?

岩田:もともと僕は、アートに関心を持つようになったのが比較的遅く、20歳ぐらいの時だったと思います。大学で、アートだけでなく音楽や文学も含めたカルチャーを学ぶ授業があり、そこで面白いなと思ったのがきっかけです。それからオーストラリアに留学したのですが、向こうで実際に美術史に関する授業を取り、興味を深めました。間もなく就職を考えるタイミングでもあり、これからどういう仕事をして生きていこうかと考えるタイミングで、アートの世界は面白く刺激的で、自分はアートに関わる仕事をしていきたいと考えるに至りました。さらに、アートをブランディングする形で仕事をしたいと考えて、最初はギャラリーで働いたのですが、のちに、やはりコマーシャルベースでないところでもアートに携わりたいという思いが強くなり、今はキュレーションについて学んでいる最中です。

――理想像や、憧れの存在はいますか?

岩田:あるといえばあるし、ないといえばないです。理想像があってそれに寄せていってしまうと、結局誰かの後を追ってしまうだけになってしまうと思います。キュレーションとしては、独自の繋げ方や発想がその人の価値になってくると思うので、参考にして学びたいと思う人がいる一方で、そうなりたいかといわれるとそうではない。そこは、じっくり手探りで探していかなければならないと思っています。


――いいキュレーターになるために必要な素養とは何でしょうか?

岩田:物の見方を限定しないというのは大事だと思います。一方的に何かを判断してしまうと、新しいものは生まれないと思います。例えば陶芸を鑑賞する際に「これは工芸だよね」と決めつけて見るのではなく、別の見方をしてみる。フレームワークで物を見ないことが大事だと思います。

――自分の知見を広げるために、どんなことをされていますか?

岩田:いろいろな展覧会に足を運ぶようにしています。できる限りたくさんのアートに触れて、自分の中の知や感性のストックを増やしていくことに努めています。

――キュレーションの醍醐味はどんなところにあるのでしょうか?

岩田:新しい何かが生まれる可能性があるところで仕事ができるというのは、とてもありがたいことですし、そこに魅力を感じています。もしかしたら今見ているのとは別の新しい景色が見られるかもしれないという期待感を抱きながらプロジェクトを行なっていくことはすごく刺激的で、そうしたワクワクを感じながら仕事ができることは素晴らしいと思います。自分も早くそのようなステージに立てるよう、今は修行期間と捉え一生懸命努力を積み重ねているところです。

――エブリチャンスは、特にアーティスト活動を続ける上で大切なマネタイズの部分で皆さんを応援していますが、その活動をどうご覧になっていますか?

岩田:そうですね、今の自分のようなアートの業界を志す人間にとっては、とてもありがたい、心強い存在だと思っています。ただアート自体の話をすると、アートの世界はお金との関係性が複雑なので、マネタイズした時に商業的な匂いが強く出てしまうと、そもそもの評価のベースから外れてしまう危険性があるので、そこを上手くコントロールしないといけないなという意識があります。自分としてはそこを上手く考えつつ、展覧会のキュレーションを通して、多くの人に作品を観てもらえる場所や機会が作れたらいいなと思います。より多くの人たちからの関心を集めるという意味でも、さまざまな可能性に対してオープンな場を作ることでのサポートをして頂けたら嬉しく思います。

――岩田さんの目指す活躍の舞台は、どこにあるのでしょうか?

岩田:そうですね。もちろん国際的な舞台に立ちたいという思いはあります。とはいえ、日本も世界の一部であり、日本にいながらにして海外の方と接するというのはもはや日常茶飯事であるように思います。今の時代は、日本で活動していくことが自然と海外にも結びついているように思います。そうした中で改めて、日本人として日本独自の価値観に対して意識的でありつつ、世界を見据えた形で活動を展開していけたらいいなと思っています。

――やりたいことを何でもやっていいよといわれたら、どんなことに挑戦してみたいですか?

岩田:今はまだ、自分が本当にやりたいことは何なのかを探している状態です。それはきっと、自分の積み重ねてきたものの延長上にあるはずだと思います。今は、自分にとっての「これがやりたい!」というドリームプロジェクトは、どれだけ新しい価値を生み出せるか、そこからどれだけ社会に対して影響力を持つことができるのか、というところにあると思うので、今やっていることを積み重ねていった先に、そういう大きな影響が与えられるような仕事ができたらいいなと思います。まずは、目の前の課題を一つひとつこなしつつ、いろいろと心身ともに成長していきたいです。

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